ミッションオイル にとって重要なことは、摩擦係数を低減させ、潤滑性能を向上させることだけではありません。なぜなら、摩擦係数が低過ぎると シフトチェンジ にて、ギア を同期させることができず、ギア が入りにくくなってしまうからです。よって、ミッションオイル には、油膜がある程度薄くなると「摩擦係数を上昇させる」といった性能も必要となるのです。
この摩擦係数の変化を「指を机の上で滑らせること」で、表現するならば・・・、
たとえば、机の上に、一滴の水があり、
その水滴の上に指を置き、そのまま前方に滑らせると、
(1) 最初、指は軽々と机の上を滑る
(2) 一定の距離を移動すると、少し重くなる
(3) 大きな抵抗とともに、指は完全にストップする
といった動きになると思います。
これを潤滑油的に表現すると、
(1) 机と指の間には、厚い油膜(水膜)が存在するので、摩擦が少ない
(2) 油膜(水膜)が、徐々に薄くなり、ある程度の摩擦が発生
(3) 油膜(水膜)が、完全になくなり、大きな摩擦が発生
となります。
そして、マニュアル トランスミッション にて、シフトフィール を向上させるには、上記② の状況が、安定して継続することが、大きな ポイント となります。要するに、油膜が一定 レベル まで薄くなると、ある程度の摩擦を発生させ、もし、それ以上に油膜が薄くなった場合は、反対に大きな摩擦を発生させることなく、潤滑させることで、同じ摩擦のままキープさせることが、重要となるのです。
机と指でたとえるなら、②の状況から、油膜(水膜)が薄くなっても、③の状況に移行せず、ずっと②の状況で、キープ し続けることが ポイント となります。
(指の動きは少し重くなりますが、その後、そのままの重さで動き続ける イメージ です)
そこで、この性能を確保するために登場するのが、増摩擦剤(摩擦係数調整剤)となります。
この添加剤の仕事は、油膜がある一定の薄さになると、摩擦を発生させ(増摩擦)、その後、油膜がより薄くなっても、それ以上、摩擦が強くなることを抑制(摩擦調整)し、同じ摩擦を キープ することです。
上のグラフのように、この添加剤がうまく機能すると、シフトチェンジ において、安定した摩擦を発生させることができますので、シフトフィール が大幅に向上するのです。
また、増摩擦剤(摩擦係数調整剤)の配合により、たとえ油膜が薄くなっても、摩擦係数を一定に維持する効果がありますので、シフトフィール の向上だけではなく、「ギアを守る」といった部分にも、アドバンテージ があります。